子猫が初恋提供します。


「あの、もしかして、にゃあちゃん…?」

「!」


固まるあたしに控え目に声をかけてきたのがどうやらお姉さんのようで、あたしはハッとして顔をあげた。


「あ…」


そして、あたしを見つめるお姉さんの瞳に驚いた。

切れ長な夜の瞳よりまぁるく大きな瞳の色が、夜と同じに珍しいほど漆黒の宝石みたいなキラキラ輝く瞳だったから。

吸い込まれそうな綺麗な黒に、似てないはずの夜の面影。
あたしの大好きなその色に、ほんの少しだけ身体の強ばりが解けた。



「あぁ!夜くんのにゃあちゃん…!どうりで聞き覚えあるはず」


そんな謎が解けたと言わんばかりのすっきりとした夜ママの声にハッとして我に返った。


「あ、あの、えっと…」


二人のあたしを知ってるような口調に戸惑いながら、あたしはお姉さんの黒い瞳を見つめ返した。


「やっぱりにゃあちゃん!びっくりさせてごめんね?わたしは藤間白羽(トウマシロハ)夜の姉です。こっちは母よ」


お姉さんは優しく微笑むとそう自己紹介をしてくれた。


「そう言えば自己紹介もしてなかった。気になることがあるとつい…。ごめんね、にゃあちゃん。夜くんのお母さんの雪兎(ユキト)です」


恥ずかしそうにはにかんで、夜のママはまたあたしをじっと見つめた。


本当に夜のママなんだ!


うちの両親も大概若いけど、夜のママ、すっごく若くて綺麗……!


まるで姉妹のように綺麗な二人に見とれるあたしに、夜ママがにっこり笑いながら口を開いた。


「本当に夜くんに聞いていた通りだね」


そういえば、どうして二人はあたしを知ってたんだろうって思ってたんだけど。二人の口調に確信を持つわけで…


夜くん、やっぱりあなたですか?
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