子猫が初恋提供します。
「なんで?にゃあはにゃあじゃん」
「だから、わたし達ずっとにゃあちゃんにゃあちゃん言っちゃったでしょっ?ちゃんと名前教えてよ!恥ずかしい!」
詳しいことを何も言わなかった夜に怒るお姉さんの白い肌は真っ赤だ。
あたしの事家族にまでにゃあって言ってたのかこの男…。
「?だからにゃあだって」
当の本人は家族が何を怒っているのかよくわかってなくてキョトンとしてる。えぇ、えぇ、知ってますよ。あなたに悪気なんか一切ない事くらい。
「ママはにゃあちゃんぴったりだと思う。可愛い」
「ママ〜…」
「うさ…」
しかし、夜ママだけは相変わらずのマイペースで、そのセリフに遠い目のお姉さんと夜パパ。
なんだかこの家の日常を見た気分だな。
もう、はっきりわかったけど、夜って見た目パパにどこもかしこもそっくりだけど性格はママそっくりだ。
遺伝の神秘を見たあたしだった。
それにしても、華やかな家族だなぁ。
あたしは目の前のキラキラしい美形家族に、ぽ~っと見とれていた。
間違いなく天然だろうけどお人形さんみたいに若くて綺麗なママ。
そっくりなお姉さんは穏やかですごく優しい。
夜の数年後を見てるようなパパは、これまた若くてクールなイケメンだ。
パパとママは夫婦だけど、夜とお姉さんとの組み合わせで見ると、まるで二組のお似合いな恋人どうしみたいに見える。なんて、うらやましく思ってしまった。
ううぅ~~、家族に対してヤキモチとか、あたしって恥ずかしい。
一人勝手にそんなことを考えて、恥ずかしさにまた顔が熱くなる。
「にゃあ~?なんで赤くなんの?」
「!」
鋭い夜はそんなあたしの変化を絶対見逃さなかった。
「なんでもないっ」
急な指摘に、慌ててブンブンと首を振った。
「ほんと顔赤いよ?どうしたの?」
心配したお姉さんにまで顔を覗き込まれてさらに焦る。
「へっ、平気です!なんでもないです…」
目を泳がせ、しどろもどろなあたしに、夜は胡散臭げな視線を寄越す。
「へぇ~?」
当然、見逃してくれるわけもなく。
あたしを見つめる黒い瞳が楽しそうに煌めいて、あたしはそれにビクッと身をすくめてしまう。
こういう目をした夜は確実に危険だ。
多少の学習能力でそれを察知するものの時既に遅し。
家族の目を盗んで、夜はあたしの耳に囁いた。
「…この場で、えっちなキスされたい?」
「!?」
間違いなく家族の前だって、遠慮なくやっちゃいそうな夜。いや、こいつなら確実にやりおる。
「…言います」
観念するのは早かった。
「いい子だなぁー?…チッ」
ほら、本気だぁ~~~っ!!!