子猫が初恋提供します。
「大変、お茶も出さずに。ちょっと用意してくるね」
「手伝う」
「あ!おかまいなくっ!後、これよかったら…」
すっかり忘れていた手土産を慌てて渡すと、夜のママは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「すごい!美味しそう。ありがとう、にゃあちゃん」
チーズケーキを持って夜ママが嬉しそうに立ち上がり、パパもそれについていく。
「あ、わたしも。ちょっとごめんなさい」
今度はケータイが鳴り出したお姉さんも立ち上がって、あたしと夜のふたりっきりになったところで夜がすかさず動き出す。
「にーあーちゃーん?」
待ってましたとばかりに、笑顔で促す夜が怖い。
「そのぅ…」
あたしはいたたまれず、ソファに座って膝を抱えてちっちゃくなった。
「白羽お姉さんが、夜とお似合いに見えてうらやましいなぁー…て、思っちゃいまして」
「!」
みるみる真っ赤になる顔を膝に押さえつけながら、この場でちゅうされては適わないと、ゴニョゴニョと小さな声で白状した。
熱の冷めない赤い顔をそろそろ上げて夜を伺い見ると、夜は片手で顔を覆いながら天を仰いでいた。
「無理……。限界……っ」
「えっ!?うわぁっ!!」
そして、まるで吐き出すようにつぶやくと、あたしをいきなり抱き上げた。
いつかのように子供みたいに抱っこされたあたしはいきなりの展開にびっくりして、落っこちないようにぎゅっと夜にしがみついた。
「うさー。もう部屋に行くからお茶いらない」
「えぇっ!?」
夜はキッチンのママに向かって声をかけると、驚いて声をあげたあたしを抱っこしたままでスタスタとリビングから出ていって、今度は二階に行くための階段をトントン軽やかに上がっていく。
残された夜のパパとママがあっけにとられた顔をして夜に抱っこされたあたしを見ていた。