子猫が初恋提供します。
すっかり影が伸びて陽の落ちた帰り道を、足取り軽く歩いて行く。ぼんやりと存在を主張し始めた丸い月を見上げて、俺はにあの事だけ考える。
にあといるとただただ楽しい。
ころころ変わる表情とか、素直で可愛い性格とか、なんかもう、ぜんぶ可愛い。
ヤバいくらいにぜんぶ、好き。
この子が俺の隣で笑ってくれるなら、なんでもしてやりたいって。
誰かの為に…初めて、そう、思った。
きっと知らない。
だって言えない。
にあに言えなかった俺の本音は、すげぇ独占欲とか、執着とか、今まで縁もなかったようなモノにまみれたものだから。
俺がなんでも出来て凄いなら、それはぜんぶ、おまえにあげる。
だってにあが笑ってくれるなら、なんだってしてあげる。
だからにあをぜんぶ、俺にちょうだい
。
…なんてことを考えた。
身体とか心とか、あの子のぜんぶが欲しかった。
それは、俺が生まれて初めて明確に意識した欲。
あぁー、ほらね?
「…俺、重ーい」
思わずもれたつぶやきが空に小さく消える。
だから、なんか、言えなかった。
こんな重くて引かれたら嫌われちゃうじゃんって。
…つーか、誰かに嫌われんのが怖いとか初めて思ったなぁ。
だいたい俺、誰かに好かれようが嫌われようがどーでもいいし。
そう思って17年生きてきたし。
「………」
なんかいろいろ戸惑うんですけど。
んー、でもまぁしょうがない。
俺に捕まっちゃったにゃあが悪い。
手離すなんて死んでも無理だもん。
だからさ、にあ。
死ぬほどいっぱい俺の愛をあげるよ。
代わりににゃあも俺のこと、嫌えなくなるくらい死ぬほど好きになってよ。
「おぉ…それ、サイコー」
やっと見つけた本気で大事なモノ。
俺はもーめちゃくちゃ愛しくてたまんないんだから。
…にゃあもとっとと俺に追いついて、もっといっぱい俺を愛してよ。
「さて、そんなわけだからー、明日はどうして可愛がってやろーかな~?」
にあを思うだけで、毎日楽しいなー。
俺といて、おまえもそうだったら…いいな。
「…はぁ。もう逢いたいー…」