子猫が初恋提供します。
「寂しかったー」
「ふにゃあっ!?」
そう言って、教室に入って来た夜は、なんの遠慮もなしにあたしをぎゅうぎゅう抱きしめる。
朝会いましたよね?
だけど、周りからはキャー!なんて歓声が上がった。
「蓮ちゃん、今日も綺麗だねー」
「近寄るなタラシ」
「他に言うことない…?」
そして、今日も蓮にちょっかいをかけている嵐さんは早々に撃沈だ。
これは休み時間ごとのいつもの光景。
「!!?」
それを目を見開いて、口までパクパクさせてショウグンが固まって見ていた。
「なっ、なっ、何やってんだよっ!!?離れろよ!!!」
顔を真っ赤にしたショウグンが、あたしと夜に向かって指差しながら怒鳴った。
「にゃあー、今日もまた俺ん家来て?」
「えぇっ!?」
そう言って、あたしを抱き上げて頬にキス。
「~~!!?おいっ!!?」
ショウグンはわぁわぁと喚いているというのに、夜は揺るぎなかった。
「聞けよっ!!?コラ!!!」
うわ~、さすが夜。
無視だ。
いや、って言うより存在を気にしてすらいなさそう。
興味ないものにはとことん反応の薄い夜。
ちょっとばかしショウグンが気の毒になった。
「てめぇっ、ほんと何なんだよっ!!?」
いい加減痺れを切らせたショウグンのその怒鳴り声に、
「?」
夜がようやくショウグンにその目を向けた。
それだけでもちょっと怯んだようにショウグンが後ずさる。
…夜の美貌は男の子すら慌てさせるのか。
キラキラな夜に耐えるようにぐっと前を向いて、ショウグンと夜がついに対峙した。
「とっ、とにかくいい加減離れろよっ!!?」
気をとり直すようにそう怒鳴ると、ショウグンは夜を睨みつけた。
あたしは反射的にまたビクリと肩を強ばらせた。
「?…ヤダ」
「っ!!?」
だけど夜はプイッとそっぽを向いて、あたしを守る様に震えた肩を力を込めてさらに抱き締めた。
それから不思議そうにショウグンに向き直ると、その顔をじっと見つめた。
「おまえ…誰?」
「今気付いたみてーな反応すんなよっ!!?」
すごい。あのショウグンが振り回されてる。
やっぱり夜のが一枚上手だなぁ。と、あたしはいっそ感心しながら夜を見た。