春風~HARUKAZE~
「…藍チャ…私……だ、好き…。」

「…うん…。」





佐々木の声は、はっきり聞こえなかった。

泣いて、いるんだろう…。

でも…『好き』って言葉は、聞こえた…。





少し経って、ドアが開いて、閉まる音が聞こえた。





しーんとした病室に耳を澄ますと…すすり泣き…??





「…周……。」





藍の、声だ。





「私、ずるいよね。春風のこと思ってるふりして……ううん。本当に思ってるんだけど……。」





…藍??





「思い出してほしくないのは、私の我が儘だよね。…ハルカチャンがいてもいなくても、好きには、なってくれないのに、ね…。」





どういうこと、だ…??





「…ハルカチャンは、ずるいよ…ッ。周置いて、一人で逝っちゃって…。あんなに想われてたのに……あんなに…想ってたのに…ッ。」





藍のすすり泣きは、大きくなっていた。





「……私だって…好きだったのに…ッ。」





…え…??





「…ハルカチャンが羨ましい…。」





藍が病室を出ていくのを、聞いていた…。
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