春風~HARUKAZE~
僕は、目を開けた。

病室には、一人きり…。





『……私だって…好きだったのに…ッ。』

『…ハルカチャンが羨ましい…。』





藍は、泣いていた。

藍が泣いたのなんて、いつぶりだろう…。

…藍は、泣かない奴だった。

少なくとも、僕の前では。





頭の中は、真っ白だった。





そして、いつの間にか、眠っていた…。





*





「今日の午後には、退院ですね。」





次の日の朝、僕は医者にそう言われた。

普通に嬉しかった。

久しぶりに家に帰れる。

学校にも、行ける。





病室に戻って、僕は早速身支度をした。





「はいッ。これでいい??」

「うん。」





母さんに手伝ってもらい、荷物を鞄につめる。

…だいぶ、病院にいたんだな…。

荷物の多さに、自分でも驚いた。
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