春風~HARUKAZE~
「…お昼頃また来るわ。じゃあね、周。」

「うん。ありがと。」





母さんが病室を出て行くと、僕は一人になった。





…昨日の、藍の言葉。

そして…“松本ハルカ”の存在。

いろいろなことが浮かぶ。





僕の中に、欠片だけ残った記憶が、蘇ろうとしていた…。





僕は…思い出すべきなのだろうか。

佐々木のことも、松本ハルカのことも。





思い出したら…僕は幸せじゃなくなる??

藍や、佐々木も…幸せじゃなくなる??

もう、何もわからない…。





ふと、佐々木の顔が浮かんだ。

…笑っている。

今度は、夢の中に出てきた女の子。

やっぱり…笑っている。





僕は、その笑顔を守れないのかな…。





『…戻れるよね??私…周クンの心の中に…。』





夢の中で聞いた言葉。





『好き…。』





涙が混じった佐々木の言葉。





この気持ちは……何だろう…。
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