春風~HARUKAZE~
「…大丈夫か??」

「……杉山??」





杉山は、ホッとした様子で頷いた。





「ッたく…。久しぶりだと思ったら、倒れてて……ビックリしたぜー…??」

「悪ぃ…。」





僕は、笑いながら言った。





「本当よ、周ッ。退院できたと思ったら…また病院に来るなんてねぇ。」





母さんが言う。





「…俺、入院してたっけ…??」

「…あら、何言ってるの??」

「長倉、お前…事故に遭ったんだろ??」





…事故??

トラックの残像。

大きく響くクラクションの音。

真っ暗になった世界…。





「…事故、うん…。確かに……でも…。」

「周??覚えて、ないの??」

「トラックにぶつかったのは、覚えてる…。」

「じゃあ、その後は??」





すぐに聞き返す母さん。





「その後は……わかんない…。」





真っ暗な世界から、今にいる気がする…。
< 106 / 130 >

この作品をシェア

pagetop