春風~HARUKAZE~
*





「…ただいま。」

「あ、周おかえりー。」





僕は、家に着くと母さんの声も聞かないうちに階段を駆け上がった。





部屋に入って、机の引き出しを開ける。

…いつぶりだろう…この写真を見るのは。

ハルカの誕生日に見たきり、もう九か月ほどだろう。





久しぶりに見るハルカは、記憶の中の姿と全く同じだった。

当たり前か…。

ハルカの時間は、あの頃のまま止まっているんだから…。





…写真の中の僕は、笑顔だった。

隣にいるハルカも。

その笑顔は、その瞬間の宝物で。

でも今は…悲しいだけだ。

もう……一緒に笑い合えないのだと思うと、悲しみがこみ上げてくる。





…やっぱり、見なければ良かった…。





こんな気持ちは、久しぶりだった。

まるで、僕の中で想いを止めていたものが、消えていくように…。

ハルカを想う、切ない気持ちが溢れてくる。
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