春風~HARUKAZE~
「…――クン。」

「……。」

「…長倉、クン??」





佐々木の声で、夢から覚めた気がした。





「あ、ごめん…ッ。」

「ううん…。」





ダメだな、俺。

ハルカのことは忘れるって決めたのに…。





「…あのね、私、誰かと付き合うのって初めてなんだ…。」





佐々木は、小声で言った。





「…俺も、ハルカだけだった。」





僕も小声で言う。





そして、二人同時に笑った。





「長倉クン…ありがとうッ。」

「いや…こっちこそ。」





今は…この笑顔だけで。

今は…この場所だけで。





佐々木と一緒に、いられれば…それだけで。
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