春風~HARUKAZE~
「私は…嬉しかったよ??長倉クンが誘ってくれた時、本当に嬉しかった…ッ。」





泣きそうな顔で、佐々木は言った。





「でも…長倉クン、楽しくなさそうだったから…。電車でも、無言だった、し…。」





佐々木は…泣いていた。

涙で潤んだ目が、キラキラ光っている。

…思えば、佐々木が泣いたところは、初めて見た。





「…俺だって、嬉しかったよ。すごくすごく。でも…緊張、してて……ごめん、な??」

「私こそ…ごめんなさい。こんなことで泣くなんて情けないよね…。」

「いや…。初めてのデートだからって、緊張して泣かせるなんて…俺も、情けねぇ…。」





佐々木は、今日一番の嬉しそうな顔を見せた。





「…なんか、さ、私達って、謝ってばっかりだよねッ??」

「確かに…そうかもなッ。」





いつの間にか、僕も佐々木も笑っていた。





佐々木の涙。

そして、笑顔。





「私が今日遅刻したのはね、緊張して寝れなかったのと…長倉クンと会えるから、ちょっと気合入れちゃったから、なの…。」





佐々木は、恥ずかしそうに言った。





そんな佐々木を、可愛いと思う。

どんな佐々木も、好きになれそうな気がした…。





「…手、繋いでも、いい??」

「あぁ。」





真っ赤に染まる佐々木の頬。

温かい二人の手。





繋いだ手は離さないよ、きっと…。



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