春風~HARUKAZE~
『…――はい。えっと…長倉クン??』





電話の向こうで、佐々木の声が聞こえた。





「…うん。あのさ、今日学校休むから…。」

『え??調子悪いの??大丈夫ッ??』





心配そうな、佐々木の声。





「大丈夫。ちょっと頭痛いだけだから。…じゃあ、また。」

『…おだいじにね??また、ね…。』





電話を切って、ベッドに倒れこんだ。





佐々木の声がまだ残っている。

僕は、ハルカにしがみつきすぎていたのかな…。

今はちゃんと、佐々木が好きなんだ、きっと。





佐々木を見て、ドキドキする。

声を聞いて、嬉しくなる。

一緒にいて、楽しくなる。





恋なんて、もうできないと思っていた。

でも…今、佐々木に恋している僕がいるんだ。





…目をつぶると、僕は夢の中にいた。





『…長倉クン…。私、長倉クンと一緒にいられて幸せなんだ…。』





佐々木の声。

でも、姿は見えない。
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