春風~HARUKAZE~
「じゃあね、周。」

「どっか寄ってくのか??」





家とは反対方向に行こうとする藍に聞いた。





「そーよ。なぁに、一緒に帰りたかった??」

「ただ聞いただけッ。」

「怒んなくてもいいのに。…じゃ、春風にちゃんと渡してね??」

「おう。わかってるよ。」





そう言って僕達は別れた。

もう、だいぶ暗くなっている。

そんなに悩んだかな…??

佐々木が喜んでくれるのかが楽しみだった。





…ハルカには、何かあげたことなんてないな…。





また…ハルカのことを考えてしまう。

佐々木の気持ちを大切にする。

そう、決めたはずなのに…。





その時、携帯が鳴った。

…佐々木だ。





「…もしもし…??」

『あ、長倉クン。家の前通ったら、お母さんが帰ってないって言うから、何してるのかなって思って…』

「あぁ、ちょっと…買い物。なんか用だった??」

『そっか。…何でもないんだッ。ごめんねッ。』

「そ??じゃあ、明日。」

『うん。バイバイ。』





静かに消えていく佐々木の声。

僕は、気づかなかったんだ。

…この時の、佐々木の気持ちに。

用がなくても電話をしたかった、佐々木の気持ちに気づけなかったんだ…。
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