春風~HARUKAZE~
「そ、っか…。私ね、不安だったの…。私から言ったことなのに。それでもいいって言ったのに…やっぱり、長倉クンに、ちゃんと好きになってもらいたいの…ッ。」

「佐々木…。」

「我が儘で…ごめんね…。」





我が儘じゃないよ…。





「…我が儘なんかじゃないよ。ありがとう…。」





僕は…そっと、佐々木を抱きしめた。





…ハルカは、もういない。

それでも僕は、忘れられない。

死んだ人のことが…好きなんだ…。

でも…





「佐々木…好きだよ。」





…この気持ちは、嘘じゃない。





「…ねぇ、春風って、呼んで…??」





もう、呼べないと思ってた名前。

今度は、君に……。





「…春風、好きだよ…。」





僕はそう言って、唇を重ねた。





唇から伝わる熱が、あたたかくて。

流れる涙が、つめたくて。

そしてなぜか…切ない。





僕達の初めてのキスは、春の風のようだった…。
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