春風~HARUKAZE~
「この写真見てから、ずっと不安だったの…。周クン、まだ忘れてないんだって。…私が好きじゃなくて、ハルカサンに似てる私が好きなのかなって…。」





春風が泣いているのは、声でわかった。

こっちを向こうとしないから。





「ねぇ…ハルカサンのこと、好きなんでしょ??」





静かに、春風の声だけが耳に入った。





「周クンが好きなのは…私じゃなくて、ハルカサンなんだよ…ッ。」





急に、春風はこっちを向いた。

そして…初めて聞いたような口調。

始めて見たような顔…。





僕は、何も言えなかった。

『好きなのは、君だよ。』って…。

言えなかったんだ。





僕が黙っていると、春風は何も言わずに部屋を出ていった。

追いかけようと思ったけれど…足が動かない。





ごめん…ごめん、春風。





好きなんだ、君のこと。

はるか……ハル、カ……。





忘れられなくて、ごめん。
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