親愛なる「丸」
僕はサークルの会長だったから、他の人と比べて必然的に部員との接触が多かった。
当然、君とも。
毎週のミーティングは、小さな喫茶店をサークルで貸し切り行われていた。
ミーティング後、その喫茶店の外での井戸端会議もまた毎週恒例だった。
そこで盛り上がって新たなイベントが企画されることが多かった。
当時、お笑いブームが僕の中に沸き起こっていた。
ちょうどM‐1グランプリが人気絶頂の頃だったろうか。
ネットで観たりはしていたが、実際にライブや劇場へ足を運んだことはなかった。
せっかく大阪にいるんだ、お笑いを観に行きたい。そうだ、みんなを誘って……
[ てくてくてく ]
この効果音は、気のせいだった。漫画じゃあるまいし、そんな訳がなかった。
なのにこんな効果音が脳裏をよぎったのは、「丸」が近付いてきたからだった。
「丸」は……こほん、君はやって来て、唐突に僕にこう言った。
「先輩、お笑いデートしましょう!」