親愛なる「丸」


で え と?


君が言うには、君はお笑いが好きで大阪の大学に来たのに、全然生でライブを観に行けていない――。


で、僕に白羽の矢が立ったという訳だ。


お笑いブーム絶頂の僕は、その話に乗った。


サークル外のような内のような企画。


ミーティングで取り上げるのが面倒な場合……つまりこの時の僕のような場合は、その場でみんなに適当に声をかけるだけでもOKなのが暗黙の了解だった。


という訳で、他のみんなも誘った。


しかし一応な身分は大学生で、しかもその時期テスト前……皆バイトもある訳で……


まあ結局、二人で行くことになった。



「丸」とデート……あれがデートと呼べるのか……(笑)



定員2人乗りの僕のバイクの後ろに乗りたがった君。


バイトに行く以外に使われていなかったし、特に断る理由もないので、乗せていく約束をした。


その考えが浅はかだったのは、当日すぐ分かった。



御堂筋を走る間中、

「きゃーきゃー!すごいー!」


バイクや車の走る音で掻き消されるとも劣らない、雄叫びともとれる君の声。


後から聞いた話だけど、君はバイクが大好きなんだってね。


後ろ専門で。


250ccの僕のバイクでも喜んでくれたなんて光栄だ。


雄叫びを聞いてたこっちも飽きなかったよ。


そんなに笑ってくれるなら、ずっと僕の後ろに乗ってればいいのに――。


なんて、僕らしくないことまで思わされてしまった。



……僕は、「恋」とか「愛」とか苦手なんだ。


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