親愛なる「丸」
君をバイクに乗せた時の僕は、彼女いない歴2年。
大学で福岡から大阪に出てくる時に、前付き合っていた彼女と別れた。
彼女は地元の専門学校に進学が決まっていた。
まだ若かった僕らには、遠恋なんて無理だった。
それからは、色恋沙汰とは無縁の生活をしていた。
クリスマス?
バレンタインデー?
何それ美味しいの?
――元々僕は、八方美人の要素を持っていたらしい。
一般に「友達」と呼ばれるであろう知り合いならいるつもりだが、悩み事は他人には一切話さない。
「親友」とか、よく分からない。
どこでどう間違ったのか、相手を信じるということが苦手で、逆に相手の腹のうちを探る癖が付いていた。
人に「優しく」出来ても、なかなか人を信頼できない。
僕の特徴だ。
恋愛みたいにお互いを信じ頼り合うことなんて、する気もなかったし出来る気もしなかった。