神の森
「ならば、そなたしかいないではないか。
桜河家には恩返しとして後継ぎを残しておる。
本来ならば神の守は、男子もしくは生娘とされているが、
そなたの力を持ってすれば問題なかろう。
そなたは、生まれながらにして神の守なのじゃからな。
神の森に反して、桜河家に災いがあっては、
そなたも生きていけないだろう。
神の森の力は絶大じゃ」
「それが神さまのなさることでございますか」
宿命とはいえ、父母が崖崩れで亡くなったのは神の森のなさったことだと
知らされ、祐里は、言い知れない怒りに震えていた。
「神の森には守り人が必要じゃ。それも力を持った守り人が・・・・・・。
わしは年老いて神の森を守る力を失いつつある。
わしには、祐里、そなたしかおらぬ。
現にわしの身体が癒えてきておるのはそなたのなせる神業じゃ」
八千代は、祐里の手を力強く握り締めて懇願した。
「榊原さま、それはあまりにご無体なお言葉ではございませんか。
突然いらっしゃって、わたくしたちの大切な祐里さんを連れて行こうと
なさるなんて」
夕食の膳を持って、薫子が座敷に入って来た。