神の森
光祐が部屋に戻ると、祐里は、浴衣に着替えて、
神妙な顔つきで座っていた。
「光祐さま、いろいろとご心配をおかけして申し訳ございません」
祐里は、正座をして光祐に頭を下げた。
「祐里のお爺さまは、ぼくにとってもお爺さまなのだから
気にすることはない。
祐里、お爺さまの体調が戻られたら、神の森まで送って差し上げなさい。
夏休みに入るから優祐を連れて行くといい。
恐れなくとも大丈夫だよ」
光祐は、震える祐里の手を取った。
「光祐さま、祐里は、光祐さまのお側を離れとうはございません」
祐里は、光祐の胸に顔を埋めた。
光祐は、優しく祐里を抱きしめた。
「祐里、時期が来たのだよ。
縁のない時は、こちらが祐里の親族をいくら捜しても
見つからなかったのに、こうしてあちらから捜しに来られた。
それに病み上がりのお爺さまを一人で帰すわけにはいかないだろう。
優祐を連れて里帰りをするつもりで行って来なさい。
祐里の父上さまと母上さまの生まれ育った土地を
一度は見ておきたいだろう。
ぼくが付き添って行きたいのだが、どうしても今、
仕事を離れるわけにはいかないのだよ。
仕事が一区切り着いたら、すぐに迎えに行くからね」
光祐は、祐里のいない毎日を考えただけで空虚な気分になりつつも、
祐里の出生の謎が解け、神の森が祐里を必要としているという
現実を受け止めなければならないと感じていた。
「はい、光祐さま」
祐里は、不安で押し潰されそうになりながらも光祐に頷き返した。