神の森

 神の森に発つ前日の終業式帰りに、

柾彦が小さな袋を持って、優祐の前に現れた。


「優祐くん、明日、発つのだろう。

 何かの時に役に立つかもしれないから、これを持っていくといいよ。

 母上さまには内緒だよ。

 ぼくが言うのもおかしいけれど、

母上さまをしっかり守ってあげるのだよ」

 柾彦は、青空のような笑顔を優祐に向けた。

 かつての守り人として多少なりとも祐里の手助けが出来ればと考えて

準備したものだった。


「はい。柾彦先生、ありがとうございます。

 母は、ぼくがしっかり守ります」

 優祐は、袋を胸に抱いて決意の瞳で柾彦を見上げた。




 翌日、祐里と優祐は、お屋敷で家族にしばしの別れを告げて、

八千代と共に早朝の桜川駅から、光祐と祐雫に見送られて

汽車で旅立った。



 夕方まで汽車に揺られて、茜色に輝く夕日のトンネルを抜けると、

汽車は、宵闇の緑が原駅に到着した。



 駅舎の目前に壮大な神の森が広がっていた。




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