神の森
神の森
祐里は、静寂の中で目を覚ました。
遠くで夜明けを告げる鳥が鳴いていた。
隣の布団では、優祐が静かな寝息をたてている。
祐里は、優祐を起こさないように静かに起き上がって着替えをした。
外に出ると、闇夜が白みかけていた。
外気が冷たく感じられた。
祐里は、誘われるように、朝露と靄に覆われた森に入る。
祐里の身体の奥深くで、森は懐かしい音色を奏でていた。
一度も訪れたことのない森が祐里を受け入れていた。
祐里は、母に抱かれているような優しい心地を感じて大きく深呼吸する。
森の空気が血液を通して祐里の体全身に行き渡っていった。
神の森は、祐里の中に流れる榊原家の血筋をすんなりと受け入れていた。