神の森
春樹の消息を探しにきた土地で、春樹の面影を持ち合わせた子どもに
出会えた事は偶然の成り行きとは思えなかった。
この子どもは、春樹の消息の手がかりを握っているに違いないと感じる。
「ぼくは、桜河優祐と申します」
優祐は、表情が柔らかくなった八千代に親しみを感じた。
「桜河優祐くんか。ここは、どこもかしこも桜ばかりなのだね」
「はい、桜は、この桜川地方を守護する大切な樹ですので、
至る所に植えられています。
春の桜の季節は、絵にも描けない美しさです。
それでは、明日の九時に桜旅館に迎えに行きます」
優祐は、八千代に一礼して家路についた。