神の森
風呂上りに祐里の浴衣を纏った美和子は、祐雫の部屋に案内された。
「とても、よい香りのお部屋ですね」
なんともいいがたい気持ちを落ち着かせる仄かな甘い香りが香っていた。
「母上さまの香りでございます。
このお部屋は、子どもの頃から母上さまがお使いでございましたので、
今でも母上さまの香りがしてございますの」
祐雫は、この部屋にいると祐里と一緒に居る気分になった。
「えっ、子どもの頃からですか」
美和子は、不思議に思って問い返した。
「はい、母上さまは、子どもの頃に父母を亡くされて、
それから父上さまと兄妹のようにお屋敷でお世話になってございましたの。
父上さまと母上さまは、初恋を実らせられたのでございます。
御伽噺のようでございましょう。
母上さまは、シンデレラガールなのでございます」
祐雫は、布団を並べて敷きながら美和子に微笑みかけた。
美和子は、机の上の家族写真に目を止めた。
光祐の横で幸せに包まれている祐里を見つめる。
永久の愛が感じられて美和子は、自分の行いが恥ずかしくなって
目を伏せた。