神の森
人影が森に消えるのが見えた。
冬樹だった。
(森で何かが起きたのでございましょうか)
祐里は、心配になって冬樹の後を追いかける。
雨は容赦なく祐里の身体を叩いた。
祐里は、神の森が道を開けるがままに、叩きつける雨の中を
暗闇に吸い込まれるように走った。
冬樹の姿は一向に見えなかった。
それでも、この先に必ず冬樹がいると確信できた。
気が付くと、前方に川が見えていた。
いや、暗闇の中で見えたのではなく感じたのだった。
崖下の川を見下ろす形で、冬樹は、川の岸壁に佇み、雨に打たれていた。