神の森
我に帰った冬樹の腕の中に気を失った祐里がいた。
あの時の小夜に生き写しだった。
冬樹は、祐里を抱きかかえると、小夜を取り戻したかのごとく
東の祠(ほこら)に閉じ込めた。
邪魔をした春樹は、もう現れないと思うと口元に笑みが浮かんでいた。
その左肩には、邪悪な黒い大蜘蛛が張り付いていた。
祐里は、神の森が荒れている原因が分かりかけていた。
冬樹の淋しいねじれた愛が神の森を荒らしているように思えた。
冬樹は、それに気づいていない。
それでも、祐里には冬樹が芯から悪い人間には思えなかった。
(叔父さまは、淋しいお方……
何かを置き去りにされていらっしゃいます)
祐里は、冬樹のこころに自分のこころを重ねて哀しみを噛み締めていた。
「叔父さま、わたしは、祐里でございます。
お母さまではございません。
どうぞ雪乃叔母さまの優しさにお気付きになられて、
現実にお戻りくださいませ」
祐里は、夢の中で冬樹のこころに届けとばかりに囁きかけた。
すると夢の場面が移っていった。