神の森
………
春樹と小夜の笑顔があった。
生まれて間もなくの祐里は、小夜に抱かれて乳を飲んでいた。
「小夜、ほんとうに愛らしい子だね」
笑顔の春樹が側で小夜と祐里を見つめていた。
「春樹さま、こうして乳を飲ませているだけでしあわせな気分になります」
祐里は、小さな体で一生懸命に乳を飲んでいた。
小夜は、祐里を抱いているだけで、
産後の体調が戻っていくように感じられた。
「この子は、強い力を持っているようだ。
それにしても、右手を固く閉じているのはどうしてなのだろう」
春樹は、祐里の固く閉じられた右手に触れた。
祐里は、生まれてから一度も右手を開かなかった。
「きっと、幸運を握っているのですわ。
そのような話を以前に聞いたことがあります」
小夜は、眠った祐里をそっと布団に寝かせた。