神の森
蜘蛛の糸
夏休みの終わりが近付いていた。
祐里と優祐が神の森に出発して、連絡のないままひと月が過ぎていた。
書き留めていた電話番号は不通で、手紙を出しても、
宛先不明で戻ってきる始末だった。
桜河のお屋敷では、家族が暗い面持ちで毎日を過ごしていた。
光祐は、仕事の段取りをつけて夏の休暇を一週間作り、
祐雫を連れて神の森に夜行列車で旅立った。
神の森はこの時代と平行して存在しながら、
神から選ばれし者でなければ入ることが出来ないのではないかと、
光祐は推測する。
それ故に榊原の血筋を受け継ぐ祐雫を伴えば、
必ず神の森に行き付くことが出来るように思えた。
それでも、光祐は、祐里と幽かながらにこころが通じている感があり、
離れていても祐里の存在が感じられた。