神の森

 午後二時を回った頃に森尾の車が玄関の車寄せに戻ってきた。


 光祐と祐里は、車の音を聞きつけて迎えに出た。


 車から降りた八千代は、祐里を見るなり驚愕の表情を見せた。

「そなたは・・・・・・」


祐里は、光祐の背中に隠れる。


「祐里をご存知なのですか」

光祐は、八千代と祐里を交互に見つめ、背後で震える祐里を気遣った。


 八千代は、祐里の元へ駆け寄ろうとした瞬間、

長旅の疲れと心労でその場に倒れてしまう。


 光祐は、八千代を背負い、客間の布団に寝かせた。

 祐里は、八千代の手を握って座っていた。


「祐里、知り合いの方だったの」

 光祐は、訳が分からずに祐里に問いかけた。

「いいえ、はじめてお会い致しました」

 祐里は、蒼白な顔で光祐を見つめ返した。


「光祐さま、こちらは、私のお爺さまでございます。

 不思議に思いますがそのように私の中で声がいたします。

 私を捜しに来られたのでございます」

「祐里を捜しに・・・・・・

 だが、祐里は、ぼくの妻だよ。

 幼子ではないのだから今更連れて行くわけにはいかないだろう」

光祐は、突然の祐里の言葉に戸惑っていた。


 祐里を桜河の家に引き取るときに父は、ありとあらゆる手段で

祐里の素性を調べた筈だった。

 それが今になって祖父らしき人物が出現するとは

まさに青天の霹靂の気分だった。


 祐里は、静かに八千代の手を握って目を瞑っていた。

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