神の森
「さぁ、祐雫、まだ先は長そうだよ。
婆やの持たせてくれた麦茶を飲んでから進もう」
光祐は、背負い鞄から水筒を取り出して、祐雫と一緒にのどを潤した。
「父上さま、ここはとても不思議なところでございますね」
祐雫は、紺碧の空を見上げながら、夏だというのに身震いした。
「地元の方でさえ、神の社を知らないのだから、手紙が届くはずもない」
光祐は、祐雫に気付かれないように小さな溜め息を吐くと、
気を取り直して鞄を背負った。
「さぁ、神の森に随分近付いたよ。
祐雫、あともう少しの辛抱だからね」
光祐は、祐雫に声をかけつつ、自身を奮い立出せた。
「はい、父上さま」
祐雫は、汗で濡れた髪の雫を拭って、返事をした。