神の森

 光祐は、重い空気を押して神の森を進んだ。


鬱蒼と茂った樹木に遮られ、

薄日さえ射し込むことを拒否している暗い森が何処までも続く。


 方角を見失った光祐は、ただ前に前に進んでいた。


 大風に巻き込まれて投げ出されて以来、腕時計が手元から外れて、

神の森に入ってからどれ位の時間が経過したのかも、

すでに分からなくなっていた。


 ひんやりとした風に乗って、仄かに甘い香りが光祐を誘った。


(祐里の香り・・・・・・)


 光祐は、香りに導かれるままに重い空気を押しながら、ひたすら走る。


 森が開けたところに湖が広がっていた。


 どこからともなく優しい風が吹いて、湖面に浮かんでいた桜の花弁が

光祐の目前に舞い上がった。

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