神の森


『旦那さまは桜池のお祭りで美しい娘に出合いました。

 娘は旦那さまの奥さまになって、

旦那さまと一緒に桜の樹を大切にして暮らしました。

 桜の樹は喜んで、いつまでもいつまでも、

桜河のお屋敷を守ってくださいました。

 とっぺんはらりのひらひらふるる』


 濤子御婆さまの昔話が頭の中に広がると同時に、

桜河家先祖代々の墓に桜河麗櫻(りおう)の名が

記されていたことを思い出していた。



「麗櫻おばあさま、必ず祐里を連れ帰ります。

 ぼくに力をお貸しください」


 光祐は、麗櫻の胸の中でこころに誓った。

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