神の森
一瞬木立の間から眩しい光が射して、我に帰った光祐の腕には、
祐雫が抱かれていた。
「祐雫、大丈夫かね」
光祐は、祐雫を気遣いながら、ゆっくりと揺り起した。
「父上さま、祐雫は、大丈夫でございます。
それよりも母上さまを早くお助けくださいませ。
大きな蜘蛛の巣にかかっておいででございます」
祐雫は、光祐の大きな胸の中で安堵しながら、
祐里の痛々しい姿を思い返していた。
光祐は、祐雫の無事を確認して、辺りを見回した。
湖は跡形もなく消え失せ、木立に囲まれた祠が目前に現れた。
しかも、不思議なことに、祐雫共々、湖の水に濡れている筈の身体が
乾いていた。
懐かしい桜の香りに誘われてふと見上げると、
祠(ほこら)の扉が音もなく開いて、
白い狩衣姿の祐里が正座している姿が目に飛び込んできた。
祐里は、目を閉じ、見えない糸で雁字搦(がんじがら)めに
されているように感じられ、痛々しい姿に光祐は、痛みを覚えた。