神の森
「祐里」
光祐は、労わりの声で、祐里の名を呼ぶ。
祐里は、光祐の声を耳にして静かに目を開けた。
愛しい光祐の心配気な顔が瞳に飛び込んできた。
(光祐さま、どれほど、お会いしたかったことでございましょう)
その瞬間、祐里の胸が鼓動を始めた。
光祐は、走る。
鋼のように固い空気の結界を祐里への愛の力で打ち破るかのごとく
突き進む。
自身が傷つこうとも祐里をこの手に抱(いだ)きたい想いが先行した。
「祐里、ぼくの大切な祐里。迎えに来たよ」
光祐は、森中から放たれる千の棘の痛みに堪えて祐里を抱きしめる。
「光祐さま」
祐里は、消え入るような声で光祐の名を呟き、その胸の中で気を失った。