罪線
"殺意"


そんなモノは別に持っていなかった。

ただ、壊してみたかったんだ。

形ある物を、この手で壊してみたかった。

僕はチラ付かせていたフルーツナイフを、そのまま鶏に向けた。

彼らにはきっと"恐怖"なんて無いのだろうが、僕に追われ、逃げ回る。


ハッキリ言って、その姿は醜い。


が、醜い物が嫌いな僕には、壊す才能が備わっていた様だ。



かわいそうな鶏にとって、唯一綺麗になれた瞬間。



鳥小屋の中に一輪の、真っ赤な薔薇が咲いた。



< 48 / 69 >

この作品をシェア

pagetop