罪線
「アンタ、借金いくらあるんだ?」


「150万……」


150万?真面目なヤローなら、五年もありゃ自力で返せるな。


「10……20……30……」


「あの、何してるんですか?」


札束数えてんだよ。


「……70。70万やる。だから男と縁切れ。わかったか?」


「いや、70万って……」


じれったい。早く受け取れ。金はいくらでも湧いて出るんだ。


女が迷ってる間に、俺の携帯が鳴る。


「……なんだ?まだ時間あるよな」


もちろんメールの送り主はβ。が、内容はいつもと違っていた。


「ん?……人質が脱走を計った。……警察に押し戻されたみたいだが、少しお仕置きしてやれ……from.β……はぁ?あの女……!」


「どうかしたんですか?」


「何でもね〜よ。とにかく、金取っとけ。……じゃあな!」


「……あ、ちょっ!」


急ぎ足で立ち去る俺に、女が話し掛ける。


「また会えますよね?!」


「さぁな!」


そればっかりは保証できない。


俺は大急ぎでその場を後にした。


< 58 / 69 >

この作品をシェア

pagetop