大好きでした
お母さんの口癖。
『お兄ちゃんはあんなに良い子なのに海音は…』
そんなお兄ちゃんに嫌気がさして、高校生の時はよく家出したりした。

今じゃあの頃が嘘みたいにとっても仲良しだけど。



そんな昔を思い出しながらエレベーターに向かって歩いていると、キョロキョロと誰かを探している男の人が目に止まった。


その人が振り返った瞬間、私はハッとした。



『あの人だ…。』



あの時、あんなに恥ずかしいと思っていたのに、何故か私はその人に向かって歩き出していた。


私に気付いたその人は、
『あっ…この間は大丈夫だった?』
長い髪をかきあげ、恥ずかしそうに聞いてきた。

『大丈夫です。この間は本当にすみませんでした!!心配して声かけてもらったのに逃げたりしちゃって…。』
『そんなの別に気にしてないよ。』


恥ずかしそうに笑うその顔につられて私まで笑顔になってしまった。


『何か誰か探してたみたいですけど、誰かと待ち合わせとかですか?』
私が聞くとその人は顔を真っ赤にして下を向きながら…
『待ち合わせ…とかじゃなくて……。探してた。あの日………。』


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