エクソシスト
「……し、死んだはずじゃ」

涙が出そうだった。

理由はわからないが、親父が目の前にいる。

動かしようのない、現実の存在として。


奏雲は何も答えなかった。

ただ、薫に向き直り、まっすぐ見返してくる。


「親父…?」

薫の声に奏雲はようやく口を開いた。


「エクソシストになったのか」

唐突な問いに薫は、足を止め、答えた。

「あ、ああ」

「そうか、なら死ぬなよ」

そう言う奏雲の顔はどこか笑っているようにみえた。

「楽しみがなくなるからな」

奏雲の顔は明らかに歪んだ笑顔を浮かべていた。


薫は背中に不気味なものを感じた。

そして奏雲はゆっくり薫に近づくと指から青白い光を放った。
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