簪彼女。
「ないですねぇ……」
丁度昨日、持って帰っちゃいました。
「あー……小野は?」
「ない」
そりゃ、昨日が今週最後の女子体育のある曜日だったんだもん。
まーちゃんも持って帰っちゃってるでしょ。
てか、多分女子全員持ってない。
これ自信ある。
「………どうしよう、先生」
「いっそ今日一日お化けとして過ごすか、赤松」
「とりあえず先生の靴に画ビョウ仕込んできますね」
「ごめんなさい」
あぁ、もう!
ついつい、まーちゃんとのやり取りの癖でコントに入っちゃう。
これじゃ話が進まないよ……!
しかも何がピンチって、ペンキがもう乾いてきてるってこと。
落ちにくい、絶対これ落ちにくい。
「あのさぁ。……俺のは?」
「え?」
高橋くんが、頬をポリポリと掻きつつ言う。
「そりゃ、男もんだから赤松次第だけどさぁ……」