簪彼女。
03
「耳……いてぇ………」
「ご、ごめん……」
あの後。
廊下で思いっきり叫んでまーちゃんから痛い一撃を貰った私は渋々、高橋くんからジャージを借りることになった。
「わざとじゃないんだよ?ただ、ちょっと、その……びっくりしちゃったって、言うか……」
「いや、うん、わかってるから。ってか何回も言うけど、悪いのは俺だから」
あの叫びを隣で聞いていた高橋君は、耳が痛くなっちゃったみたいで。
未だに耳をトントンと叩きながら歩いていた。
そんな高橋くんの反対の手には、ジャージの入った袋が持たれていて。
これからそれを着なくちゃいけないんだって思うと、頬が熱くなるのを感じた。
「……着いた」
そして気付けばもう、シャワー室の前。
その扉を見上げればため息が出てきてしまいそう……。