簪彼女。


「ほら、ジャージ。急がねぇとペンキの匂いついちまうぞ」



ポス、と私に袋を渡す。


けれども、その袋にペンキが付着していないところを見るともう乾いて閉まっているようだ……。


きっとそう簡単にはペンキは取れてくれまい。


はぁっとひとつため息をついて。



「ありがとう、高橋君。授業始まっちゃいそうだから、行きなよ。もう私は大丈夫だから」



ちょこっとだけ、無理矢理笑顔を作って。


後は高橋くんの言葉も聞かずにシャワー室の中へと入った。



「………あーー……っくしゅ」



その中で一人、ぼぅっと壁にもたれればくしゃみひとつ。


なんだろう、ペンキってわりと冷えたりするのかな。


そんな事を頭の端で考えつつ、赤いペンキの着いたブレザーを脱いだ。


ふと鏡に映った自分を見ればそれはもう真っ赤で真っ赤で。


……さすがに、まず顔を洗っておきました。



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