簪彼女。
「そのイチ!タオルを巻く!」
シュルッ。
美しくかつ手際よく裸体に巻かれたタオル。
その端が絶対に落ちないように結んで、私はふんっと鼻息を荒くする。
「そのニ!確認!」
見えてないか、だよ!
こう、いろいろなところが見えていないか、全身鏡で念入りにチェックするんだ。
「そのサン!……助走……ッ……」
ちなみに私は、運動神経皆無だから。
高々と足と手を上げて、できるだけ早く走れるように備えた。
「そのヨン!ダァアアッシュ!!!」
シュピーン!
……なんてカッコいい音がした訳じゃないけれども、まぁ運動神経皆無でタオルを巻いている姿にしてはそこそこの走りが出来てるんじゃないかと思う。
いわゆる、どや顔と言うものをして私は無駄に縦長のシャワールームを駆け抜けた。