簪彼女。
01
「お母さん!お母さん、これかわいー」
「あらまぁ……簪なんて買っても、雪ちゃんの髪型じゃあ纏められないわよ?」
そうだ、私の髪型はあのときショートで。
簪なんて買っても、到底使えるような髪型じゃなかった。
「いいの!雪、髪伸ばすから!」
それでも、どうっしてもその簪が欲しくて。
「もう……しょうがないわねぇ、約束よ?雪」
「うん!」
「大きくなって、雪のさらさらな髪の毛が伸びたら――……この簪で綺麗に纏めて母さんに見せてね?」
「うん!勿論だよ!」
そうして買ってくれた簪。
赤くて丸い飾りのついた、玉簪。
今の私の宝物だよ―――………