簪彼女。

04



「なんつー破天荒な奴だ……」



手に持った簪を見詰めながら、一人呟いた。


ってか、俺はどんだけお人好しなんだ。


むしろお人好しにも程がある。


だってよ、ペンキ塗りを先生に頼まれて快く引き受けてやっただけだぜ?


むしろ、いい事したぜぇ!


なんて清々しい気持ちになってたんだ。


なのに、……。



……少し、よそ見をしちまったんだ。


あんとき、目の端に向こう側から歩いてくる赤松が見えて、……可愛いな、って思って。


よそ見したのが運のつき、だったな。



……さっき、簪を取るとき。


簪でひとつに纏められた髪の毛の下に覗く首筋が白くて色っぽ………ぽ……何考えてんだ俺ぇええ!!


つい、簪片手に悶絶。


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