簪彼女。
「ねぇ、雪ちゃ~ん?」
そして、こういった猫なで声で、しかもまーちゃんが私の事を「ちゃん」付けで呼ぶ時は、ろくでもない事を考えているのだと知っていたのに……
その考えに少しでも耳を傾けてしまったのを激しく後悔します。
何故かって。
…………今、私と高橋くんの腕は一枚の風呂敷でがっちりと、それはもうがっちりと固定されてしまっているからです。
「純情王子様が逃げないように」
「なぁっ!?」
「そして、ピュア姫が逃げないように」
「えぇっ!?」
そう言い残して、ルンルンとスキップして帰ってしまうまーちゃん。
その背中を、ただ唖然として見送るしか出来なかった。
「ごめんね……歩きづらいよね」
「いや、お前が謝ることじゃねぇよ、ウン……」
実際、まーちゃんが言ったように私は逃げ出したい。
恥ずかしくて。