簪彼女。
横でマンションを見上げる高橋くん。
その横顔を見上げながら言えば、つぃとこちらに降りてきた高橋くんの視線とかち合った。
とても急なことで、私は反応出来なかったのだけれども。
とっさに反応した高橋くんは、ぷいと反対方向を向いてしまった。
ちらりと覗く耳が赤くて、あぁ寒いのかな、なんてのんきな事を考えている間。
「じゃ、じゃあ!俺、ここらで帰る!」
反対方向に向いた顔をそのままに、高橋くんが歩き出した。
「わぁ!」
やっぱり!
高橋くんは重大な問題に気付いてなかったんだ!
「え?」
「わ、わ、わ、ぁ」
高橋くんが動いたと同時に、ぴったりと繋がっていた腕に引かれてしまって。
そのままよろけた私は、軸が上手く取れずによろけた。
まずい!
このままじゃあ、コンクリートとキスすることになっちゃうよ……!!
「あぶねぇっ!」