簪彼女。


わりと近い、耳元で高橋くんの声が聞こえた。


その声に驚いて肩がぴょんと跳ねて。


気付けば私は高橋くんの腕の中におさまっていた。



「…………」



「…………、」



お互いだんまり。


むしろ、何を言えば良いのかがわからない。



「……えっと……」



はは、と誤魔化すように高橋くんが笑った。



「………ごめん」



なんで、高橋くんが謝るんだろう。


むしろ、突っ込んだ私が謝るべきなのに。



「ううん、……」



「怪我、ない?」



「だい、じょー……ぶ、だよ」



「そりゃ良かった」



なんの変哲もない会話。


……と見せかけて、実はかなり恥ずかしい思いをしています。


何故か。


それはもう、高橋くんが喋る度に直に伝わってくる声が鼓膜を震わしている訳で。



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