簪彼女。



それから、五分経ったか経たないか。



「だーめだ、とれねぇ!なんとかして!」



そういって、高橋君はギブアップをした。


思ったより早かったなぁ、なんて苦笑いが頬にあがってくる。


そんな私を見て、高橋くんは口を尖らせた。



「わーらーうーなー。赤松は赤松で、小野を呼び出すなりなんなり――……」



そう言って、高橋くんは言葉を止めてしまった。


何故かって、きっと目の前にいる私の行動に驚いちゃったからだと思う。



「な、に、してんだ、赤松?」



心底不思議そうな顔で、私を見る高橋くん。



「ん?ちょっと強引だけど、取ろうかなって」




パサリと、簪で止められていた私の髪が肩におりた。


手には簪がある。



「取ろうかな、ってお前、方法があるなら最初からそれを――……うわっ」



< 49 / 74 >

この作品をシェア

pagetop