簪彼女。
それから、五分経ったか経たないか。
「だーめだ、とれねぇ!なんとかして!」
そういって、高橋君はギブアップをした。
思ったより早かったなぁ、なんて苦笑いが頬にあがってくる。
そんな私を見て、高橋くんは口を尖らせた。
「わーらーうーなー。赤松は赤松で、小野を呼び出すなりなんなり――……」
そう言って、高橋くんは言葉を止めてしまった。
何故かって、きっと目の前にいる私の行動に驚いちゃったからだと思う。
「な、に、してんだ、赤松?」
心底不思議そうな顔で、私を見る高橋くん。
「ん?ちょっと強引だけど、取ろうかなって」
パサリと、簪で止められていた私の髪が肩におりた。
手には簪がある。
「取ろうかな、ってお前、方法があるなら最初からそれを――……うわっ」