簪彼女。
01
――……昨日は楽しかったな。朝起きて、まずはじめに思った事だ。
ひょんな事から高橋くんとお話する事ができて、お夕飯もご馳走する事が出来て。
いつもは一人だった夕飯が、とっても楽しかった、嬉しかったな。
「上手い。お前、見かけ通り料理超上手なんだな」
そう言ってくれた高橋くんの顔が、感激の色に染まっていた。
あとね、
「ご馳走さん」
って言ってくれたことと、
「また食いにくるからな!」
って言ってくれて、とっても胸が暖かくなったよ。
まるで、私の心の中にロウソクの火がぽっと灯ったみたい。
……お母さん、雪は元気でやってます。
心配しないでね。
そっと、お母さんの遺影に話し掛けた。
――……とても穏やかな、朝でした。